「売ったほうがいいのかもしれない。でも、まだ決めきれない…」
相続した実家、住まなくなった自宅、住宅ローンが残っている家。
不動産を前にすると、多くの方が“すぐには答えを出せない状態”になります。
それは決して優柔不断だからではありません。
不動産の売却は、金額も大きく、感情も絡み、将来の選択肢にも影響する重大な決断だからです。
実際のところ、「売らない」と決めている人よりも、“まだ決めていない人”のほうが圧倒的に多いのが現実です。
このコラムでは、なぜ売却を迷うのかという背景を整理しながら、
まだ決めていない段階でやっておくべきことを分かりやすく解説します。
なぜ「売るか決められない」のか?4つの代表的な理由
不動産売却を迷う理由には、いくつかの共通パターンがあります。
まずは、ご自身がどのタイプに近いのかを確認してみてください。
① 相続した実家を手放しきれない
親から引き継いだ実家を前にすると、「売る」という選択に抵抗を感じる方は少なくありません。
思い出が詰まった家を処分することに罪悪感を覚えたり、「親が大切にしていた家を手放していいのか」と悩んだりするケースもあります。
さらに、兄弟姉妹がいる場合は意見が分かれ、話し合いが進まないこともあります。
感情が絡む問題だからこそ、簡単には決められないのです。
② 住宅ローンが残っていて不安
「まだローンが残っているけれど、売れるのだろうか?」という不安もよくある理由です。
売却価格よりも残債が多かったらどうなるのか、借金が残るのではないか、任意売却になってしまうのではないか――。
仕組みが分からないままでは、不安が先に立ち、行動に移せなくなってしまいます。
③ 将来使うかもしれないと思っている
「子どもが将来住むかもしれない」「老後に戻る可能性もある」など、将来の選択肢を残しておきたいという考えも自然なものです。
今すぐ必要でなくても、“いつか使うかもしれない”という思いがあると、売却に踏み切るのは難しくなります。
しかし、その“いつか”が本当に現実的なのかどうかは、冷静に整理してみるといいのかなと思います。
④ 何から始めればいいか分からない
実は最も多いのが、「売るかどうか以前に、何をすればいいか分からない」というケースです。
名義変更、税金、査定、登記、手続き…。
難しそうな言葉が並ぶだけで、動くのが億劫になってしまいます。
ですが、最初の一歩は決して難しいものではありません。
“決断”ではなく、“整理”から始めるのをお勧めします。
【相続迷い型】感情と現実を切り分ける3つの整理ポイント
相続した実家を前にすると、「売る・売らない」は単なる経済判断ではなくなります。
思い出、親への気持ち、家族との関係…。
だからこそ、まずは感情と現実を分けて整理することが大切です。
思い出と資産価値は分けて考える
家そのものと、そこで過ごした思い出は本来別のものです。
「家を売る=思い出を手放す」わけではありません。写真や記録は残りますし、家族の記憶が消えることもありません。
一方で、不動産は維持費がかかる“資産”でもあります。固定資産税、修繕費、管理の手間…。空き家になれば、防犯や近隣への配慮も必要です。
感情は大切にしながらも、数字で見える現実を一度把握することが、冷静な判断につながります。
兄弟・家族間で共有しておくべきこと
相続不動産の場合、共有名義になっていることも少なくありません。
「自分は売りたいが、兄弟は残したい」など、意見が分かれると話が止まってしまいます。
大切なのは、結論を急ぐことではなく、
- 維持費はいくらかかっているのか
- 将来誰が管理するのか
- 売った場合の分配はどうなるのか
といった事実を共有することです。
感情論だけでなく、情報を揃えて話し合うことで、選択肢が現実的になります。
売らない場合の維持コストを把握する
「とりあえず今は売らない」という判断も、もちろん一つの選択です。
ただし、その場合でも
- 年間の固定資産税はいくらか
- 修繕が必要になった場合の費用はどれくらいか
- 空き家としてのリスクはあるか
を把握しておく必要があります。
“何となく保有する”のと、“理解したうえで保有する”のでは意味が大きく違います。
感情を尊重しながらも、現実を見える化すること。
それが、相続迷い型の方にとって最初の一歩になります。
【ローン不安型】住宅ローンが残っていても売却できる?
「まだ住宅ローンが残っているから、売るのは無理だと思っている」
そう感じて、検討自体を止めてしまっている方も少なくありません。しかし実際には、住宅ローンが残っていても売却は可能です。
まずは仕組みを知ることが、不安を解消する第一歩になります。
残債があっても売れる仕組み
住宅ローンがある不動産には、通常「抵当権」が設定されています。売却する際は、この抵当権を抹消する必要があります。
一般的には、
- 売却代金でローンを完済する
- 完済と同時に抵当権を抹消する
という流れで手続きが進みます。
つまり、売却価格が残債を上回っていれば問題なく売却できるケースがほとんどです。
まずは「いくらで売れそうか」と「ローン残高はいくらか」を照らし合わせることが重要です。
オーバーローンの場合の選択肢
もし売却価格よりローン残債が多い場合(いわゆるオーバーローン)でも、必ずしも売却できないわけではありません。
例えば、
- 自己資金を充てて完済する
- 住み替えローンを利用する
- 金融機関と協議する
といった方法があります。
状況によって選択肢は異なるため、「無理だ」と決めつける前に、数字を整理することが大切です。
「不安だから動かない」が一番リスクになる理由
ローンが残っている状態で放置すると、
- 金利上昇の影響を受ける可能性
- 建物の老朽化による資産価値の低下
- 将来の売却タイミングを逃す
といったリスクもあります。
特に、築年数が進むほど建物の価値は下がる傾向があります。
迷っている間に状況が不利になるケースも少なくありません。
大切なのは、すぐに売る決断をすることではなく、現状を把握したうえで選択肢を持つことです。
不安の正体は「分からないこと」にあります。
数字を整理するだけで、見える景色は大きく変わります。
【可能性温存型】「将来使うかも」と思っている人が確認すべきこと
「今は使っていないけれど、将来子どもが住むかもしれない」 「老後に戻る可能性もゼロではない」
こうした“可能性”があると、不動産を手放す決断は難しくなります。 将来の選択肢を残しておきたいという気持ちは、とても自然なものです。
ただし、その可能性がどれくらい現実的なのかは、一度冷静に整理してみる必要があります。
本当に使う可能性はどれくらいあるか?
例えば、
- 子どもはその地域に戻る意思があるのか
- 仕事や学校の事情で移住は現実的か
- 子供が将来その家に住む計画はあるか
こうした点を具体的に考えてみると、「何となくそう思っているだけ」というケースも少なくありません。
親から引き継いだ田舎の実家、管理も扱い方も困難になった・・・という売却のご相談を持ち掛けられるケースは多いです。
空き家の維持コストとリスク
使っていない不動産でも、所有している限りコストは発生します。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 修繕費・管理費
- 草木の手入れや防犯対策
さらに、老朽化が進めば資産価値は下がる可能性があります。 特に木造住宅は築年数による影響を受けやすい傾向があります。
「いつか使うかも」と思っている間に、価値が目減りしてしまうこともあるのです。
売らずに保有する戦略という考え方
もちろん、必ず売るべきという話ではありません。
例えば、
- 将来的に賃貸として活用する
- 定期的に見直す前提で一旦保有する
- 一定期間内に使わなければ売却すると決める
といった「期限付き保有」という考え方もあります。
重要なのは、何となく持ち続けるのではなく、意図を持って保有することです。
可能性を残すのか、現金化して選択肢を広げるのか。 その判断材料を揃えることが、後悔しない決断につながります。
【情報不足型】まだ決めなくてよく…でも今やるべきこと
「売るかどうか以前に、何をすればいいのか分からない」
実は、このタイプの方が一番多いかもしれません。
不動産売却という言葉を聞くだけで、
登記、税金、査定、契約、ローン…と難しそうなイメージが浮かび、思考が止まってしまう。
ですが、いきなり売却を決断する必要はありません。
まずは“整理”から始めれば十分です。
まずは名義・ローン・法的状況を確認する
最初にやるべきことは、とてもシンプルです。
- 名義は誰になっているか
- 住宅ローン残高はいくらか
- 再建築は可能か
- 境界は明確か
- 隣地トラブルがないか
これらを把握するだけで、「売れるのかどうか分からない」という不安はかなり軽減されます。
難しい専門知識はまだ不要です。
まずは現状を知ることがスタートです。
価格の“相場感”だけ知っておく
査定を依頼すると、売却を迫られるのではないかと不安に感じる方もいます。
しかし、価格を知ることと、売ることはまったく別の話です。弊社ミューファでは、迷っている段階での机上簡易査定もご提供していますので、ご相談いただければと思います。(査定時にご用意いただくもの等はこちらを参考にご覧ください)
おおよその相場を把握しておけば、
- 保有する意味があるのか
- 売った場合にどの程度資金が残るのか
- ローンは完済できるのか
といった判断材料が一気に具体化します。
情報を持つことは、決断ではなく“準備”です。
売却以外の選択肢も並べてみる
売る・売らないの二択で考えると、どうしても重くなります。
例えば、
- 一定期間だけ賃貸に出す
- 親族に貸す
- 期限を決めて保有する
といった中間的な選択肢もあります。
選択肢が複数あると分かるだけで、心理的な負担は大きく軽減されます。
まだ決めなくて大丈夫です。
ただし、何も知らないまま止まるのではなく、判断材料を集める段階には進んでおくことが大切です。
売る・売らないを決める前にやっておきたい5つのこと
ここまで見てきたように、迷いの理由は人それぞれです。
ですが、どのタイプの方にも共通して言えるのは、いきなり決断しなくていいということ。
まずは、次の5つを整理することから始めてみてください。
① 現状を把握する(名義・ローン・法的状況)
名義は誰か、ローン残高はいくらか、再建築は可能か、境界は明確か。
不安の多くは「分からないこと」から生まれます。
現状を知るだけで、漠然とした心配は具体的な課題に変わります。
② 家族と情報を共有する
相続不動産や共有名義の場合、話し合いを避けて通ることはできません。
感情論ではなく、維持費や相場などの“事実”を共有することで、建設的な議論ができます。
結論を急ぐ必要はありません。まずは同じ情報を持つことが大切です。
③ 相場感をつかむ
「いくらで売れる可能性があるのか」を知ることは、売却を決めることとは違います。
相場を把握することで、
- 保有のメリット・デメリット
- ローン完済の可否
- 資金計画
が具体化します。
価格を知ることは、未来の選択肢を広げる行為です。
④ 保有コストを数字で確認する
固定資産税、保険料、修繕費、管理の手間…。
年間いくらかかっているのかを算出してみましょう。
「思っていたより負担が大きい」と感じる方もいれば、「この程度なら持ち続けたい」と判断できる方もいます。
数字で見ることで、感情だけに振り回されなくなります。
⑤ 期限を決める
迷い続けること自体がストレスになる場合もあります。
「半年後にもう一度見直す」「◯年以内に方向性を決める」など、期限を設定するのも有効です。
期限があるだけで、判断は前向きになります。
“決めない時間”を、無駄にしないために
不動産売却は、大きな決断です。
だからこそ、迷うのは当然のことだと思います。
大切なのは、
- 感情を否定しないこと
- 不安を放置しないこと
- 情報を持ったうえで選ぶこと
「まだ売らない」という判断も、整理をした上での選択なら、立派な決断です。
一方で、何も知らないまま時間だけが過ぎると、選択肢は少しずつ狭まってしまいます。
売るかどうかを決める前に、まずは状況を整理すること。
それが、後悔しない第一歩です。
染谷綜合法務グループ × ミューファでは、売却前の「整理段階」からご相談いただけます。
まだ決めていない方こそ、お気軽に現状をお聞かせください。
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